コロナ ウイルス 自殺。 警察庁が3月の自殺者数を発表 新型コロナウイルスによる影響はあったのか(藤田孝典)

コロナ下の4月、自殺者数が過去5年で最少に…本当に自殺者は増加するのか?

コロナ ウイルス 自殺

経済不況では自殺が増加する Covid-19のパンデミックによる日常生活への影響は、ますます大きくなっている。 特に観光・飲食業は厳しく、壊滅に近いという報道もある。 気になるのは、わたしの身のまわりでも、仕事やアルバイトが休みになる勤め人や学生、客が減って収入が激減している自営の人が多いことだ。 わたしの知人の内科開業医や調剤薬局からも、患者数や処方箋数減少による経営不振を嘆く声を聞く。 この週末に閑散とした街を見て、今後の生活への不安感を強くした人も多いだろう。 わたしのような経済に詳しくない者でも、世界規模の経済不況が既に始まっているのではないかと不安になる。 噂されている緊急事態宣言やロックダウンが実施されれば、経済に対して悪影響は避けられないだろう。 明日や来月からの支払いなど生活が気になり夜も眠れない人も少なくないとは思うが、 経済不況が自殺者数を増加させるのは、1920年代の世界恐慌の頃から観察されている事象である。 1929年頃から発生した世界恐慌(Great Recession)での死因を調べた研究では、死因のうち自殺だけが増加し、自殺率は失業率のピーク(1921年、1932年、1938年)と一致したという(1)。 厚生労働省による自殺対策白書(2)での自殺者推移を見ても、バブル崩壊後の拓銀や長銀、山一証券など大手金融機関が破綻した後の1998年に自殺者が24,391人から32,863人に急増し、かつ30,000人以上の自殺者数が恒常化する現象が2011年頃まで続いてしまった(図1)。 (図1)自殺者数の推移 自殺に関する記事は、自殺者数が増加する3月ないし5月に多い。 3月は、自殺対策強化月間でもある。 しかし今年に限っては、Covid-19による経済不況によっては、自殺者が5月を過ぎても増えていく可能性も考えられ、この傾向が異なってくるかもしれない。 Covid-19が引き金を引いた経済不況において有効な経済・財政対策を取らなければ、せっかく減少した自殺者を、再び増加させかねないと危惧し、この文章を書いている。 不況になると自殺が増加する 厚生労働省による自殺対策白書(2)をもとに、自殺の基本知識をまとめておく。 ・自殺者は2010年以降に明確な減少傾向をとり、2019年に20,000人を切った。 ・自殺既遂者の男女比は、約2:1でほぼ一定している。 ・例年3月は自殺者がもっとも多く、次いで5月が多い ・若年者(10歳~39歳)の死因第1位は自殺 ・男性では40~60才代の比率が、女性では40~80才代に至るまで高い ・精神障害(うつ病)による自殺は減少傾向ながらも約3割 過去の自殺対策白書内では、経済状況と自殺との関連性が記載されている。 景気動向指数の増減と「経済・生活問題」による男性の自殺者数の増減には、負の相関の関係がある(図2)。 不況になると、男性の自殺が増えるというパターンだ。 (図2)景気動向指数の増減と自殺 日本は他のOECD諸国に比べて、自殺と失業率との相関が大きい(3)。 近年の自殺対策白書では、これまで注目されていた失業や就職失敗だけでなく、 「事業不振」「生活苦」も自殺者増加と強い関連があるという結果が出ている。 多重債務による自殺者は減少傾向だが、これは法テラスなど相談窓口を充実させるなど社会的サポートが貢献している。 「コロナ失業」「コロナ倒産」「コロナ廃業」による自殺を防ぐには、社会・経済的サポートが重要であることを示している。 政府は有効な経済財政政策を アメリカの約220兆円規模の経済対策など諸外国が多額の財政出動や臨時の現金支給を決めているなかで、政府のマスク2枚給付は国民の期待に水を差した感が強いと個人的には思う。 マスクばかりが報道されているが、危機対応融資枠としての緊急経済対策や雇用調整助成金の助成率アップは、手続きがわかりにくいという批判はあるが、これは評価されるべきであろう。 コロナ不況による自殺防止として二点だけ書き留めておきたい。 1. 自殺は、家族の不和や失業・倒産、生活苦、病苦、職場環境など複合的要因が連鎖して起こる。 3割がうつ病など精神障害であるとはいえ、政治が社会的対策を打たなければ、有効な自殺対策とは言えない。 個人の医者ができることは、不眠に対する対処、話を聞き当事者が不況と向き合っていくサポート程度である。 2. 緊縮財政(Austerity)は、自殺率を上げる可能性がある。 2001年から2014年に書けての都道府県の財政政策と自殺の関連を調べた研究では、都道府県の支出が一人当たり1%の増加は、40~64才の働く世代の自殺率の0. 2%低下と相関があったという(4)。 自殺は、その人が生きていれば生んだであろうさまざまな影響や活動を失うことになり、大きな社会的損失となる。 さらに現在日本では約40人に1人と言われる自死遺族だけでなく、周囲の人間・社会へのダメージも大きい。 ロックダウンなど公衆衛生上の感染防止対策と経済活動とは両立が難しく、絶対解はないのかもしれない。 Covid-19発症者・死亡者を抑えることが優先されるのは当然として、経済不況による死者の増加も念頭におくべきである。 政治が処方しなければならない処方箋である。 Tapia Granados JA, Diez Roux AV. Life and death during the Great Depression. Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106 41 :17290-5 2. 厚生労働省 自殺対策白書(令和2年版) 3. Chen J, Choi YJ, Sawada Y. How is suicide different in Japan? Japan and the World Economy, 2009, vol. 21, issue 2, 140-150 4. Matsubayashi T, Sekijima K, Ueda M. Government spending, recession, and suicide: evidence from Japan. BMC Public Health. 2020;20 1 :243. 「トンデモ」クリニックとは? がん、アトピーなど、既存の治療、いわゆる「保険診療」に絶望して、エビデンスレベルの低い治療法に藁をもすがる気持ちで頼る患者が少なくない。 著名人でも、そういう治療に手を出さなければ、治癒ないし延命できていた可能性のある人もいるだろう。 科学的根拠がまったくない、個人の感想や経験だけに基づいた、しかも健康保険の適応外であり法外な金額を求められる治療が、公然と放置されていることは事実である。 これらの医療は、インチキ、詐欺という意味で、「トンデモ」と呼ばれるようになってきた。 聞いたことのある人は多いと思うし、耳にしたことがないという人は、よほど健康かあるいは医療に関しては情報弱者になっているといっていい。 トンデモ医療を放任している医療界、行政の責任はもちろんだが、これらを放任どころか宣伝役としてサポートしているマスメディア、出版社は、もっとも罪深いとわたしは考えている。 第一線で活躍されている腫瘍内科医であり、SNS発信も多い日本医科大学の勝俣範之教授は、ツイッターでトンデモクリニックを見分ける三つの点を挙げている。 「インチキクリニック代表。 がんのインチキクリニックを見分けるコツ。 保険が効かない自由診療。 がんが消えた、治ったとのうたい文句。 効果のあった患者さんの例が紹介されている。 しっかりと当てはまる。 」 わかりやすい、明解な解答だ。 これに怪しげな一般書や講演を頻繁に行っていれば、トンデモの可能性は限りなく高い。 ガンの場合は、抗がん剤の投与でかえって早死にしたなど、ネガティブな情報が根強い。 しかも、そのような事例がゼロではないのも事実である。 また進行してしまったガンには、近代医学は冷淡である。 「トンデモ」にすがりたくなる患者の気持ちは理解できる。 しかしその藁をもすがりたい気持ちが、トンデモ運営側にとっては、いい金づるなのだ。 善意が少しでもあれば、あのような法外な金額を提示できるはずがない。 では本テーマに帰って、精神科・心療内科の領域の「トンデモ」とは、どういった医療機関なのかを考えてみたい。 「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツは、はたしてあるのだろうか。 「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツ 自分が精神障害になった、あるいは自分の家族に精神障害が疑われ、クリニック選びをしなければならないと仮定し、「トンデモ」精神科医に出くわさないにはどうしたらいいかを、考えてみた。 インターネットでも、精神科・心療内科の選び方は数え切れないくらいに載っている。 肯けるものもあれば、「薬は絶対に飲んではいけない」など、反精神医学に凝り固まった偏った情報もある。 初診の診察時間が、30分以下である 初診は、患者の治療方針だけでなく、医師との治療関係を結ぶためにも、非常に重要な機会である。 できれば、一時間はほしいところだが、患者が多いクリニックでは現実的に一時間割くことは難しい。 保険診療である以上、毎回長時間の診察時間は取れない。 初診でしっかり情報を共有しておけば、二回目以降の診察は初診ほどの長さを要しない。 そのためにも、初診の場合は予約がやはり望ましい。 患者が多すぎる すでに飽和しており、当然ながら、一人当たりの診察時間は短くなる。 医師も多くの患者への診察で疲弊してしまい、患者にイライラをブツけるなど精神的平穏を保ちづらくなる。 患者の症状の変動を、薬剤の増量だけで対応している可能性もある。 開院して長いのに、患者がほとんどいない 患者側が医師を見放している、寄りついていない可能性がある• 初回の診察で3種類以上の薬が処方される 2016年の改定で薬剤を多剤処方した場合の診療報酬が減算され、さすがに初回から多剤処方をする医者は減ったはずだが、例外もいるかもしれない。 医師の経歴 医学部卒業後5年以内で開業している医師は、知識や経験が偏っている可能性が強い。 開業していなくても、総合病院などを経験せずにクリニックを転々としている医師にも、わたしが患者ならば診てもらいたくない。 自説を押しつける 「論文でも評価されているこの薬がいい」 「薬は百害だらけで、精神分析が最適」 など、患者と相談して治療を進めていこうという意思ゼロ。 日常生活への質問がまったくない 生活指導は、精神科治療のイロハである。 食事、睡眠、仕事については、最低限はチェックするものである。 最新機器だけで診断を下す ロクに問診もせず経過も追わず、光トポグラフィの結果だけで「うつ病ですね」などと診断する。 状態評価もせずいきなり磁気刺激法なども論外。 ネットで見かける悪評は、あまり気にしない方がいいと思う。 一人の執着的な患者が、悪評をあちこちにバラまいていることが多いからだ。 もっとも、「一度に5種類の薬が出された」などの事実記載には、参考にしたほうがいいだろう。 よく、「目を見てくれず電子カルテばかり見ている」というクレームも多い。 ただわたしが患者ならば、この点はあまり気にしない。 なぜなら、医者には自閉スペクトラム症と疑われる人も多く、アイコンタクトを取れない人が多いからだ。 彼・彼女らに悪気はなく、よく勉強しており、融通は利かないが治療には熱心なことが多いからだ。 ただ精神科の場合で特殊なのは、他の診療科以上に患者と医師との「相性」が重要なことだ。 相性が悪い医者-患者関係では、治療はうまくいかない。 わたしも、あなたとは相性が合わないから担当医を変えてほしいと要求されたことが何回かある。 治療者としても、相性が合わない患者とつき合いたくないのが人情だ。 幸いわたしの場合は、あからさまに主治医交代を求められたのは、医師経験20年ほどだが3,4人レベルで済んでいる(内心では、違う医者がいいと思っていた患者は多いだろうが)。 良い「相性」を築くのが下手な医者もいて、それはその医者の能力不足ということになるだろう。 同じように、医者と良い「相性」を築けず、ドクターショッピングばかりしている患者もいる。 5人の医者と出会えば、一人ぐらいはまずまずな相性の医師に出会えるのではないか。 わたしの先輩医師が教えてくれたことだが、5人医者を代えても合う医者がいないと言われるときには、医者よりもその患者のほうに問題があるという。 ネット時代の現代では、昔と違って他者の評価を家にいながらにして知ることができるの。 しかし、アマゾンや食べログのレビューがしばしばヤラセや炎上などで問題となるように、ネットの情報は、玉石混淆である。 まして医者との相性を数値化するのは、人工知能が発達した現在でも不可能だ。 今日ご紹介した情報を参考にして、アナログに進めていくしかないのが現状だと思う。

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警察庁が3月の自殺者数を発表 新型コロナウイルスによる影響はあったのか(藤田孝典)

コロナ ウイルス 自殺

清水:二つの意味で大きな影響を与えうると思っています。 一つは、そもそも日常を過ごしていくことに不安を感じている人たちが、連日報道される新型コロナウイルス感染症のニュースに心を揺さぶられて、将来に対する、より強い恐れを抱き、自殺リスクが高まりかねないということです。 もう一つ、より多くの人に影響を与えかねないこととしては、経済や仕事の問題の連鎖から高まるリスクです。 新型コロナウイルス感染症は健康問題ですが、その対策として、人の移動が物理的に行われなくなってきています。 そうすると当然、経済の問題、仕事の問題につながっていき、収入が絶たれたり仕事を失ったりという暮らしの問題、家族の問題にもなりかねません。 そうした悩みや課題が複合的に絡まっていく中で、心の問題、自殺のリスクが高まる恐れがあります。 安田:精神面でも、生活面、経済面でも、多方向から追い詰められてしまう可能性がある、ということですよね。 ライフリンクとしてこれまで、様々な政策提言をされてきたと思いますが、経済の落ち込みや大きな社会不安があったとき、これまでどんな影響を自殺問題に及ぼしてきましたか? 清水:実は、はっきりとした影響が見受けられます。 日本の自殺者数は、1997年まではおよそ2万人台の前半で推移していました。 これが98年、一気に8千人以上増加して、3万人を超えたんです。 98年度の前年、つまり97年の秋に、北海道拓殖銀行や三洋証券が経営破綻に陥って、山一証券が自主廃業に追いやられました。 その決算期にあたる98年3月に、日銀の単価が急激に悪化して倒産件数が跳ね上がり、完全失業率が当時としては最も高い4%台となりました。 そうした社会経済状況の悪化に引きずられるようにして、日本の自殺は急増に転じました。 こうして日本の自殺の問題の背景には、社会経済的な問題が非常に深く関わっているということがすでに分かっています。 今回も、経済の問題が人の命の問題に直撃することがないよう、万全の策を講じていく必要があります。 安田:経済がガラガラと崩れ落ちる煽りを、どんな人がどんな状況で受けがちなのか、分析したからには教訓を活かさなければ、ということですよね。 新型コロナウイルス感染拡大と、高まる自殺のリスク 安田:清水さんも作成に関わった、新型コロナウイルス感染症の影響による自殺防止策の強化を求める要望書、どういった内容だったのでしょうか? 清水:これを取りまとめたのは超党派の、自殺対策を推進する議員の会で、私はそのアドバイザーを務めています。 その議員の方たちと議論しながら取りまとめました。 ポイントの一つは、今政府が打ち出している様々な緊急対策と、自殺対策のしっかりとした連携を図っていくことです。 「自殺対策」=「生きることの包括的な支援」だということが自殺対策基本法にも書かれていますが、単に健康や感染症への対策、あるいは経済的な対策だけでなく、命をしっかりと包括的に守っていくというメッセージを、政府がしっかり打ち出すべきだということです。 自殺の背景には複合的な問題があります。 実態調査から、自殺で亡くなった人は平均して4つの悩み、課題を抱えていたということが分かっています。 人の自殺を防ぐためには、4つの組織、4つの分野の人たちが連携をして支援に当たらなければならない、ということになります。 だからこそ、それを包括的にやっていく必要があるのだというメッセージを伝えることが重要になってきます。 安田:複数の要因が絡みあっているということを前提にした対策、ということですね。 そのためには相談事業や窓口の周知も必要になりますよね。 清水:今、制度が緊急的に立ち上げられたり、これまでの制度を拡大して適用しようとする動きもありますが、制度ができても実際に住民の方たちが知らなければ、使えないわけですよね。 制度と、その悩みや課題を抱える当事者との溝をしっかりと埋めていかなければなりません。 例えば好みの飲食店やそこまでの行き方が、いくつかの条件を当てはめてネットで検索するとすぐ出てきますよね。 それと同じように、一生懸命探さなければ、今政府が打ち出している情報にたどり着けないということではなく、自分がどういう立場でどういう問題を抱えているのか、どこに住んでいるのか、といったことを打ち込んでいけば、それに合った適切な、最新の支援策の情報が得られるような、検索の仕組みを打ち立てる、ということも一つ考えられます。 同時に、相談を受ける側の自治体や民間団体の人たちが、最新の制度を入手して理解出来るようなバックアップを、政府はしっかりやっていく必要があります。 制度を作って終わりではなく、それをどう手渡していくか、ということです。 安田:要望書には他にも、児童・生徒等への自殺対策の強化などが挙げられています。 例えば子どもたちが学校に行けない、外出できないとなると、家庭内での虐待が益々深刻化するのではということも懸念されています。 一方で、学校に居場所が見いだせない子どもたちもいるので、長期の休み明けには自殺のリスクが高まることが指摘されてきました。 一斉休校が終わり、登校となったときにも同様のリスクがありますよね。 清水:実際に過去40年分の統計を集計したところ、児童・生徒の自殺、未成年の自殺においては、夏休み明けの9月1日が一年の中で一番自殺が多いことが分かっています。 今回は、期せずして春休みと、一斉休校が重なっての長期休みになっているので、夏休み明けと同じくらい、もしくはそれ以上にリスクがあるかもしれない、という心構えが必要かもしれません。 学校が再開される時にどうサポートすればいいのかを、教育関係者だけではなく、心理や精神の専門家や、福祉の専門家が予めチームを地域で組んで、対応を取っていく必要があると思います。 財務省、赤木俊夫さんの遺書の報道は「ガイドライン」に反しているのか 安田:子どもたちだけではなく、外出の自粛要請で家にいて、ドラマを観たり動画配信サービスを利用したりする方も増えていると思います。 今年の1月、WHO(世界保健機関)が映画やテレビの制作者向けに自殺予防の指針を公開しています。 映像作品が生きづらさを感じている方々に及ぼす影響が、それだけ大きいということでしょうか。 清水:テレビなどは情動に訴えるメディアなので、例えばドラマで思い入れを持っていたキャラクターが自殺で亡くなった、あるいは何か困難に直面した人が自殺で亡くなっていく、という場面があると、「困難を回避するための一つの手段」として自殺があるんだというメッセージにもなりかねません。 安田:追体験になりかねない、ということですよね。 清水:特に若い人たちがそういう影響を受けやすいことが様々な研究から分かっているので、少なくともそうしたリスクを報道関係者、メディア関係者は理解をした上で、それでも表現の自由に基づいて表現すべき内容なのかを吟味する必要があります。 表現の自由の問題と、自殺を考えている人の背中を押しかねないということと、そのバランスの中でメディア関係者は葛藤して選択をしていくことが必要です。 ただ今は、ほとんどのメディアがそうしたガイドラインの存在も知らず、各社でガイドラインを作ってすらいないのが現状です。 安田:まさに今日(3月18日)発売の週刊文春に掲載された記事についても伺いたいと思います。 森友学園の国有地売却問題と公文書改ざんを巡って、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが自殺に追い込まれました。 その赤木さんの手記が、週刊文春に公表されています。 この事件自体は、検証とさらなる報道が必要だと私自身も思っています。 一方でこうした自殺報道に動揺されている方、心理的に影響を受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 清水:WHOは、報道に関わる人たちに向けて「自殺報道のガイドライン」も公表しています。 その中には、遺書を報道しない、センセーショナルな形で報道しない、あるいは、報道する際には様々な支援策、支援機関の窓口の情報を一緒に報道すべきだ、といった、避けるべきこと、すべきことを提示しています。 そのガイドラインに単純に沿えば、今回の週刊文春の報道はガイドラインに反しているということになります。 ただ、遺書を報道すべきではない、というのは基本的な原則です。 その遺書が何らかの社会的意味を持っているのであれば、報道すべきという判断も当然あります。 私もライフリンクを立ち上げるまで、テレビディレクターの仕事をしていましたが、遺書の取材をしたことがあります。 それは自殺で亡くなる人たちが一体、最後にどんな思いだったかを知ることが、社会にとって必要だと思ったからです。 単純にガイドラインに沿うのではなく、それを踏まえた上で、伝える側が葛藤して、報道するか、しないかを決めていく必要があると思います。 ただ、年代別で見ると、若年層、特に未成年の自殺だけが増えています。 清水:統計的には「10年連続で減っている」といわれますが、減っているというのは、あくまでも年間ベースでの話です。 例えば失業者数が減るとなれば、本当に失業状態にある人が減るわけです。 自殺者数が本当に減ったといえるためには、亡くなった人が生き返ってくる必要があります。 でも、亡くなった人は生き返るわけではありません。 年間の自殺者数を指して「減った」というのは、あくまでも自殺者数が増えるペースが少し遅くなった、ということに過ぎないのです。 毎日取り返しのつかないことが起き続けている、毎日平均すると55人が自殺で亡くなり続けているというのが日本社会の現状です。 未だに非常事態が続いているという認識を持つ必要があると思いますし、とりわけ未成年、あるいは児童・生徒の自殺が増え続けているのは深刻です。 「自殺したい」というよりも、「生きるのを止めたい」と訴える若者たちが多いように思います。 こうした人たちは、経済的な問題などを取り除けば必ずしも生きていけるわけではなく、そもそも生きる気力が削がれてしまっている。 その部分への対策が非常に重要だろうと思います。 安田:若い世代に「生きる意味がない」と思わせないような社会を作っていくことも欠かせないと思います。 もう一つ伺いたいのが、自殺未遂者への支援です。 例えば自殺未遂をして医療機関に運ばれた方々が、医療的な処置は受けられても、そこから包括的な支援に中々つながってこなかった、という問題も指摘をされてきました。 清水:日本財団が2016年に行ったネットでの調査では、過去1年以内に自殺行動に至った、自殺未遂を経験した人というのは、推計で53万人いるんです。 一般的にも自殺で亡くなる人の10倍から20倍は未遂者がいるといわれているので、53万人というのは決して現実から離れた人数ではないと私も受け止めています。 その中で、実際に搬送に至る人たちが年間5万人~7万人ほどいます。 かなり致死性の高い手段で自殺行動に至って、搬送が必要と判断された人がそれだけいるわけです。 例えば死のうとしてビルから飛び降りて足を骨折した人が、足の治療をして家に帰されたらどうなるか。 「次は失敗しまい」と、より致死性の高い手段で自殺行為に及んでしまうかもしれない。 そうした身体的な治療をするのはもちろん、そもそもなぜ、その人がそうした行為に及ばざるをえなかったか、背景にどういう悩みや課題があるのか、身体的な治療と、その後の精神的な治療、そして具体的な課題の解決につなげていく包括的な支援が必要です。 それは病院の救急部門だけではできません。 精神の部門と連携をして、搬送されてきた自殺未遂者の支援に当たらなければなりません。 もっといえば、借金の問題、生活苦の問題、あるいは家族間の不和の問題となると、医療だけでは解決できません。 自治体と医療との連携が必要です。 東京の荒川区では、区民が自殺行動に至って病院に搬送されると、ご本人の了解を得た上で、入院中に保健師さんが訪ねて行って、どういう悩み、課題を抱えているのかを聞き取ります。 それに基づいて、地域でどういった支援が可能か、様々な機関と連携をして、退院する前から、ご本人が戻っていく生活環境の課題の解決まで結びつけていきます。 これが非常に効果を上げています。 安田:最後に、今、生きづらいと感じている方へ、清水さんはどんなメッセージを伝えますか? 清水:今、厚生労働省のホームページにも、電話やSNSの相談機関が掲載されているので、是非そうした窓口を活用して頂きたいです。 そして今、この社会で生きづらさを感じるというのは、決して不自然なことではありません。 むしろ私も生きづらさを感じるぐらいの社会になっています。 ただ、そうした中でも、何とか一緒に同じ時代を生きていきましょう、と呼びかけたいと思います。 安田:以前ライフリンクでも、「弱かったのは、個人ではなく、支える力でした」 という言葉を掲げていたと思います。 個人を切り捨てるのではなくって、そこまで追い詰めてしまう社会の構造を変える、という視点を、改めて確認し合いたいと思います。 2020年4月7日のDialogue for People掲載記事「」から転載).

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社説[コロナと困窮]自殺リスクを懸念する

コロナ ウイルス 自殺

経済不況では自殺が増加する Covid-19のパンデミックによる日常生活への影響は、ますます大きくなっている。 特に観光・飲食業は厳しく、壊滅に近いという報道もある。 気になるのは、わたしの身のまわりでも、仕事やアルバイトが休みになる勤め人や学生、客が減って収入が激減している自営の人が多いことだ。 わたしの知人の内科開業医や調剤薬局からも、患者数や処方箋数減少による経営不振を嘆く声を聞く。 この週末に閑散とした街を見て、今後の生活への不安感を強くした人も多いだろう。 わたしのような経済に詳しくない者でも、世界規模の経済不況が既に始まっているのではないかと不安になる。 噂されている緊急事態宣言やロックダウンが実施されれば、経済に対して悪影響は避けられないだろう。 明日や来月からの支払いなど生活が気になり夜も眠れない人も少なくないとは思うが、 経済不況が自殺者数を増加させるのは、1920年代の世界恐慌の頃から観察されている事象である。 1929年頃から発生した世界恐慌(Great Recession)での死因を調べた研究では、死因のうち自殺だけが増加し、自殺率は失業率のピーク(1921年、1932年、1938年)と一致したという(1)。 厚生労働省による自殺対策白書(2)での自殺者推移を見ても、バブル崩壊後の拓銀や長銀、山一証券など大手金融機関が破綻した後の1998年に自殺者が24,391人から32,863人に急増し、かつ30,000人以上の自殺者数が恒常化する現象が2011年頃まで続いてしまった(図1)。 (図1)自殺者数の推移 自殺に関する記事は、自殺者数が増加する3月ないし5月に多い。 3月は、自殺対策強化月間でもある。 しかし今年に限っては、Covid-19による経済不況によっては、自殺者が5月を過ぎても増えていく可能性も考えられ、この傾向が異なってくるかもしれない。 Covid-19が引き金を引いた経済不況において有効な経済・財政対策を取らなければ、せっかく減少した自殺者を、再び増加させかねないと危惧し、この文章を書いている。 不況になると自殺が増加する 厚生労働省による自殺対策白書(2)をもとに、自殺の基本知識をまとめておく。 ・自殺者は2010年以降に明確な減少傾向をとり、2019年に20,000人を切った。 ・自殺既遂者の男女比は、約2:1でほぼ一定している。 ・例年3月は自殺者がもっとも多く、次いで5月が多い ・若年者(10歳~39歳)の死因第1位は自殺 ・男性では40~60才代の比率が、女性では40~80才代に至るまで高い ・精神障害(うつ病)による自殺は減少傾向ながらも約3割 過去の自殺対策白書内では、経済状況と自殺との関連性が記載されている。 景気動向指数の増減と「経済・生活問題」による男性の自殺者数の増減には、負の相関の関係がある(図2)。 不況になると、男性の自殺が増えるというパターンだ。 (図2)景気動向指数の増減と自殺 日本は他のOECD諸国に比べて、自殺と失業率との相関が大きい(3)。 近年の自殺対策白書では、これまで注目されていた失業や就職失敗だけでなく、 「事業不振」「生活苦」も自殺者増加と強い関連があるという結果が出ている。 多重債務による自殺者は減少傾向だが、これは法テラスなど相談窓口を充実させるなど社会的サポートが貢献している。 「コロナ失業」「コロナ倒産」「コロナ廃業」による自殺を防ぐには、社会・経済的サポートが重要であることを示している。 政府は有効な経済財政政策を アメリカの約220兆円規模の経済対策など諸外国が多額の財政出動や臨時の現金支給を決めているなかで、政府のマスク2枚給付は国民の期待に水を差した感が強いと個人的には思う。 マスクばかりが報道されているが、危機対応融資枠としての緊急経済対策や雇用調整助成金の助成率アップは、手続きがわかりにくいという批判はあるが、これは評価されるべきであろう。 コロナ不況による自殺防止として二点だけ書き留めておきたい。 1. 自殺は、家族の不和や失業・倒産、生活苦、病苦、職場環境など複合的要因が連鎖して起こる。 3割がうつ病など精神障害であるとはいえ、政治が社会的対策を打たなければ、有効な自殺対策とは言えない。 個人の医者ができることは、不眠に対する対処、話を聞き当事者が不況と向き合っていくサポート程度である。 2. 緊縮財政(Austerity)は、自殺率を上げる可能性がある。 2001年から2014年に書けての都道府県の財政政策と自殺の関連を調べた研究では、都道府県の支出が一人当たり1%の増加は、40~64才の働く世代の自殺率の0. 2%低下と相関があったという(4)。 自殺は、その人が生きていれば生んだであろうさまざまな影響や活動を失うことになり、大きな社会的損失となる。 さらに現在日本では約40人に1人と言われる自死遺族だけでなく、周囲の人間・社会へのダメージも大きい。 ロックダウンなど公衆衛生上の感染防止対策と経済活動とは両立が難しく、絶対解はないのかもしれない。 Covid-19発症者・死亡者を抑えることが優先されるのは当然として、経済不況による死者の増加も念頭におくべきである。 政治が処方しなければならない処方箋である。 Tapia Granados JA, Diez Roux AV. Life and death during the Great Depression. Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106 41 :17290-5 2. 厚生労働省 自殺対策白書(令和2年版) 3. Chen J, Choi YJ, Sawada Y. How is suicide different in Japan? Japan and the World Economy, 2009, vol. 21, issue 2, 140-150 4. Matsubayashi T, Sekijima K, Ueda M. Government spending, recession, and suicide: evidence from Japan. BMC Public Health. 2020;20 1 :243. 「トンデモ」クリニックとは? がん、アトピーなど、既存の治療、いわゆる「保険診療」に絶望して、エビデンスレベルの低い治療法に藁をもすがる気持ちで頼る患者が少なくない。 著名人でも、そういう治療に手を出さなければ、治癒ないし延命できていた可能性のある人もいるだろう。 科学的根拠がまったくない、個人の感想や経験だけに基づいた、しかも健康保険の適応外であり法外な金額を求められる治療が、公然と放置されていることは事実である。 これらの医療は、インチキ、詐欺という意味で、「トンデモ」と呼ばれるようになってきた。 聞いたことのある人は多いと思うし、耳にしたことがないという人は、よほど健康かあるいは医療に関しては情報弱者になっているといっていい。 トンデモ医療を放任している医療界、行政の責任はもちろんだが、これらを放任どころか宣伝役としてサポートしているマスメディア、出版社は、もっとも罪深いとわたしは考えている。 第一線で活躍されている腫瘍内科医であり、SNS発信も多い日本医科大学の勝俣範之教授は、ツイッターでトンデモクリニックを見分ける三つの点を挙げている。 「インチキクリニック代表。 がんのインチキクリニックを見分けるコツ。 保険が効かない自由診療。 がんが消えた、治ったとのうたい文句。 効果のあった患者さんの例が紹介されている。 しっかりと当てはまる。 」 わかりやすい、明解な解答だ。 これに怪しげな一般書や講演を頻繁に行っていれば、トンデモの可能性は限りなく高い。 ガンの場合は、抗がん剤の投与でかえって早死にしたなど、ネガティブな情報が根強い。 しかも、そのような事例がゼロではないのも事実である。 また進行してしまったガンには、近代医学は冷淡である。 「トンデモ」にすがりたくなる患者の気持ちは理解できる。 しかしその藁をもすがりたい気持ちが、トンデモ運営側にとっては、いい金づるなのだ。 善意が少しでもあれば、あのような法外な金額を提示できるはずがない。 では本テーマに帰って、精神科・心療内科の領域の「トンデモ」とは、どういった医療機関なのかを考えてみたい。 「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツは、はたしてあるのだろうか。 「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツ 自分が精神障害になった、あるいは自分の家族に精神障害が疑われ、クリニック選びをしなければならないと仮定し、「トンデモ」精神科医に出くわさないにはどうしたらいいかを、考えてみた。 インターネットでも、精神科・心療内科の選び方は数え切れないくらいに載っている。 肯けるものもあれば、「薬は絶対に飲んではいけない」など、反精神医学に凝り固まった偏った情報もある。 初診の診察時間が、30分以下である 初診は、患者の治療方針だけでなく、医師との治療関係を結ぶためにも、非常に重要な機会である。 できれば、一時間はほしいところだが、患者が多いクリニックでは現実的に一時間割くことは難しい。 保険診療である以上、毎回長時間の診察時間は取れない。 初診でしっかり情報を共有しておけば、二回目以降の診察は初診ほどの長さを要しない。 そのためにも、初診の場合は予約がやはり望ましい。 患者が多すぎる すでに飽和しており、当然ながら、一人当たりの診察時間は短くなる。 医師も多くの患者への診察で疲弊してしまい、患者にイライラをブツけるなど精神的平穏を保ちづらくなる。 患者の症状の変動を、薬剤の増量だけで対応している可能性もある。 開院して長いのに、患者がほとんどいない 患者側が医師を見放している、寄りついていない可能性がある• 初回の診察で3種類以上の薬が処方される 2016年の改定で薬剤を多剤処方した場合の診療報酬が減算され、さすがに初回から多剤処方をする医者は減ったはずだが、例外もいるかもしれない。 医師の経歴 医学部卒業後5年以内で開業している医師は、知識や経験が偏っている可能性が強い。 開業していなくても、総合病院などを経験せずにクリニックを転々としている医師にも、わたしが患者ならば診てもらいたくない。 自説を押しつける 「論文でも評価されているこの薬がいい」 「薬は百害だらけで、精神分析が最適」 など、患者と相談して治療を進めていこうという意思ゼロ。 日常生活への質問がまったくない 生活指導は、精神科治療のイロハである。 食事、睡眠、仕事については、最低限はチェックするものである。 最新機器だけで診断を下す ロクに問診もせず経過も追わず、光トポグラフィの結果だけで「うつ病ですね」などと診断する。 状態評価もせずいきなり磁気刺激法なども論外。 ネットで見かける悪評は、あまり気にしない方がいいと思う。 一人の執着的な患者が、悪評をあちこちにバラまいていることが多いからだ。 もっとも、「一度に5種類の薬が出された」などの事実記載には、参考にしたほうがいいだろう。 よく、「目を見てくれず電子カルテばかり見ている」というクレームも多い。 ただわたしが患者ならば、この点はあまり気にしない。 なぜなら、医者には自閉スペクトラム症と疑われる人も多く、アイコンタクトを取れない人が多いからだ。 彼・彼女らに悪気はなく、よく勉強しており、融通は利かないが治療には熱心なことが多いからだ。 ただ精神科の場合で特殊なのは、他の診療科以上に患者と医師との「相性」が重要なことだ。 相性が悪い医者-患者関係では、治療はうまくいかない。 わたしも、あなたとは相性が合わないから担当医を変えてほしいと要求されたことが何回かある。 治療者としても、相性が合わない患者とつき合いたくないのが人情だ。 幸いわたしの場合は、あからさまに主治医交代を求められたのは、医師経験20年ほどだが3,4人レベルで済んでいる(内心では、違う医者がいいと思っていた患者は多いだろうが)。 良い「相性」を築くのが下手な医者もいて、それはその医者の能力不足ということになるだろう。 同じように、医者と良い「相性」を築けず、ドクターショッピングばかりしている患者もいる。 5人の医者と出会えば、一人ぐらいはまずまずな相性の医師に出会えるのではないか。 わたしの先輩医師が教えてくれたことだが、5人医者を代えても合う医者がいないと言われるときには、医者よりもその患者のほうに問題があるという。 ネット時代の現代では、昔と違って他者の評価を家にいながらにして知ることができるの。 しかし、アマゾンや食べログのレビューがしばしばヤラセや炎上などで問題となるように、ネットの情報は、玉石混淆である。 まして医者との相性を数値化するのは、人工知能が発達した現在でも不可能だ。 今日ご紹介した情報を参考にして、アナログに進めていくしかないのが現状だと思う。

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