まほ やく pixiv。 #1 まほやく小話まとめ1

#ネロ晶♀ #まほやく男女CP 星に溶け合う

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こんぺいとうみたい、と、聞きなれない言葉を発した彼女の目がどこか遠くをみていたものだから、つい。 「コンペイトウ?」 思わず復唱して、しまった、と思った。 踏み込むような真似をしてしまった、と一瞬で後悔する。 聞かれたくない独り言だったかもしれない、つい口をついて出ただけの意味のない言葉だったかもしれない。 俺の無意識が彼女を傷つけていやしないだろうか。 リケとミチルが作っていったシュガーをつまみあげ、しげしげと眺めていた賢者さんは、俺のそんな気持ちには当然気付くこともなく、はい、と屈託なく笑った。 その笑顔に少しだけ救われる。 「本当にこのシュガーみたいなもので……味も成分も同じようなものだと思います。 シュガーとキャンディの間のお菓子で限りなくシュガー寄り、というか」 「へえ、そういう菓子があるんだな」 彼女が懐かしそうな顔をしている理由なんて元の世界のことだろう。 突然に生活の変化を余儀なくされたという点では俺も同じだが、まるで知らない世界に落とされるなんて、死ぬよりも想像がつかない恐ろしさなんじゃないだろうか。 賢者さんのほころんだ口元を見つめていると、指先でその形を確かめるようにころころと、彼女はシュガーを転がしながら言う。 「こんなふうに、ちょっと丸い角が生えてて。 いろんな味や香り、色がついてたりするんです」 「へえ、色も?」 「はい。 うきうきするようなお菓子で、猫ばあさんのところでもたまに貰ってたなあ」 当然、彼女の戻る先は元の世界なのだろう。 次の厄災を追い返して、そうしたら、賢者さんはどうなるんだろう。 俺だって自分の世界が滅ぶのは嫌だ、と思うのに、世界からはじき出された彼女は、どんな気持ちなのだろう。 「……食っていいよ、そのシュガー」 「え! 大丈夫です、お料理に使うんですよね?」 「まあ、そうなんだけど」 「いいですよ。 今度またいただきますね」 ありがとうございます、と、彼女は当然のように俺に礼を言う。 ごく当たり前、そうすることが空気を吸うことと同義。 だから居心地がよくて、それで、だから。 「……作りすぎたか?」 月の明かりが満ちた夜、明日の朝食の仕込みついでに。 月の白くて黄色い明かりの元で作ったシュガーは、いつもより甘く出来るような気がする。 俺は色とりどりの、彼女から聞いた限りの情報で、久しぶりにシュガーを作った。 瓶にそっと、ツノが折れないように転がしてやって、さてどうしたものか。 (頼まれてもいないのに) 人と関わることは面倒くさいくせに、こうして人が喜ぶことをしたがる。 誰かにありがとう、と言われることは心地いいし、料理が誰かを傷つけることは滅多にない。 好きでやっていることだけれど、臆病で疲れた俺には本当に合っているのだ、と、カラフルなシュガーを眺めてため息をつく。 かたん、と、キッチンの入り口が小さく鳴って、キイ、と木の扉が開く音がした。 「ネロ。 すみません、夜中に」 そこには昼間見たより、少し疲れた顔をした賢者さんが申し訳なさそうに、頼りなさそうに立っていた。 「賢者さん。 どうした、眠れないのか?」 「はい、ちょっと。 暖かいお湯でもいただけたらって」 「待ってな。 ハーブティーでも淹れてやる」 すみません、と、いつしか彼女の定位置のようになっていた丸椅子に音もなく腰掛けて、賢者さんは小さく息をついた。 「寒くないか?」 「大丈夫です、キッチンはいつも暖かいから」 そうか、といつもの手順で手早くケトルに湯を沸かす。 カップをあたためて、それから良く眠れる効果があるハーブを揉んで、ガラスのポットに入れて、湯を注いで。 「……はい、お待ちどうさん」 「ありがとうございます」 「ぬるめにしてあるけど、気をつけろよ」 いつも通り丁寧に礼を言ってから、彼女はカップを手にとって、ふうふうとその表面を吹き冷ます。 海の浅いところのような色のハーブティーの香りに、少しだけ賢者さんの表情もやわらいだように見えた。 「いい香り」 「だろ。 香りだけでもリラックスできるから、少し部屋に持って帰りな」 「はい。 つられて俺もそちらに視線を落とす、と。 「こんぺいとう……?」 「あ」 忘れてた。 とにかく何だか居心地の悪い気持ちになって、どうしたものかと言葉を捜していると、それより早く賢者さんが口を開いた。 「それ、ネロが?」 まあ、ごまかす必要もその意味もない、おそらく出来ないし。 俺はそうだよ、とちょっとだけ気まずい気持ちで頷いた。 「賢者さんが言ってたのを参考に」 「あの、それ、誰かにあげたり、お料理に使ったりする予定ありますか……?」 遠慮がちに、けれどさっきよりもその目の光はきちんと今にあって、何だか少しほっとする。 要求されることが、元来嫌いでも苦手でもない。 「あるよ」 そう答えると賢者さんはあからさまに一瞬がっかりした目の色をして、それでも笑顔はそのままに、そうですか、と俯いた。 「はい」 「え?」 「あんたに。 嫌じゃなければ、やるつもりだった」 そう言って差し出すと、みるみるうちに嬉しそうな表情に変わる。 その空の天気より早く様変わりする表情に、俺も思わず笑ってしまった。 「はは、悪かったな。 ちょっと意地悪した」 「ありがとうございます、ネロ……!」 俺の言葉にそんなことはどうでもいいのだというように首をぶんぶん振りながら、賢者さんは瓶を受け取って、大事そうに手の中で見つめていた。 熱視線で溶けちまいそうだな、シュガー。 「合ってる? コンペイトウ」 「はい! 私たちの世界では、もう少し淡い色のものも多いですけど……でもとっても可愛いです、これ」 そういや俺の料理を極彩色って言ってたな。 「じゃあ今度は少し淡くしてみるか」 「食べても?」 「もちろん」 召し上がれ、という俺の言葉を聞いて、彼女はわくわくした表情のまま瓶の蓋を外して、そのうちの一つをゆっくりつまんだ。 まるで雪の結晶を扱っているみたいに、優しくて、震えた指先で。 「ネロの作ったシュガー、食べるの初めてかもしれないです」 「ほんと? まあ確かに、あまり魔法で作ったもの、食べさせたことないよな」 シュガー作りは一番最初に学ぶ魔法。 全ての基礎で、だからこそその人となりが露になる魔法だ。 だから何となく気恥ずかしくて、必要に迫られなきゃ作らなくなっていた。 「いただきます」 そう思うと何だか恥ずかしいもんだな、と、彼女がゆっくり口に含んでいくそれを見る。 彼女が最初に摘んだのは、星と月が交わったような黄色のシュガー。 かり、さり、と、心地よい咀嚼音が静かなキッチンに響く。 賢者さんは目を閉じて、小さなその星のひとかけらみたいな粒を味わっていた。 さり、さり。 小さなかけらが砕けて飲み込まれて、彼女の中に落ち着いていくのが何となく見える。 音がやがて消えて、賢者さんはゆっくりその目を開いて、薄く、小さく微笑んだ。 「……おいしい。 ネロ、とても美味しかったです」 その言葉と同時に、まるでシュガーと同じくらい大きく見える涙の粒がぼろ、と、賢者さんの目から溢れた。。 「おい、どうしたんだ? 眠れなくて辛かったか?」 「ち、違うんです、ごめんなさい。 ぐずぐずと、手の甲で溢れる涙を拭いながら、彼女は涙声のままそう言った。 伸ばせない手をぎゅっと握り締める。 「欲しいもの……?」 「……はい。 私、魔法のこと、すごいなって思います。 私には出来ない、夢物語が目の前で実際に起こっていて、それがこの世界では普通のことで」 すすりあげながら、賢者さんはそれでもどこか嬉しそうに、小さな小瓶を見つめながら話してくれる。 ああ、俺なんかにそんなふうに心を開かないでくれ、と、頭の片隅で恐怖にも似た気持ちが頭をもたげる。 それなのに、心の一番奥の方は、それを喜ばしいと思っている。 だから彼女の、まるで俺にとっては魔法のような力がある言葉の濁流を、押し留めることなどできないし、しないでいるのだ。 「でも、時々やっぱり、元の世界のことを思い出すんです。 俺にはその気持ちを本当に理解なんて出来ていないのだろう、分かるよ、なんてどの口が言えただろう。 それでも、分かりたかった。 彼女の寂しさが、孤独が、寄る辺のなさが、結局誰かを求める自分の空虚さと似たものならば、それはどんなにか不安なことだろうと思うから。 涙できれいに濡れたまつげをしばたかせて、痛そうに賢者さんは笑って、顔を上げた。 その視線に心臓が一度、大きく鳴った。 「だから私、キッチンが好きなんです」 「は……?」 脈絡のない言葉にそう思わずぶっきらぼうな返答が漏れると、賢者さんは分かっていたように笑みを深くした。 「ネロはいつも、魔法を使わないで料理をしてるから」 「あ……」 合点がいった。 賢者さんにとってここで俺が料理をしていることは、当たり前の、彼女の世界の日常に似通ったことだったのだ。 魔法舎という魔法使いだらけの小さな世界で、彼女は。 「私も、自分の世界のやり方でいろいろやったり、皆さんそれを喜んでくれたりするの、とても嬉しいんです。 でも、どうしても、ごめんなさい」 ネロには甘えちゃうみたいで。 思わず抱きしめそうになったこの感情、随分ともう使っていなかった、心の奥のおくが動いたような感覚。 「そういうことだったんだな」 声は震えてないだろうか、上ずってないだろうか。 賢者さんははい、と嬉しそうに頷いている。 「今だって、本当は眠れる魔法をかけたっていいのに。 手間をかけてハーブティーを作ってくれました」 「まあ、俺、あまりそういう呪文得意じゃないのもある、けど」 「それならフィガロのところに行きなって言ったっていいでしょう?」 くすくすと笑いながら、赤い目の賢者さんがおかしそうに笑う。 やれやれ、と息を一つ吐いた。 「こんぺいとうも同じです。 ネロの優しい気持ちがいっぱい入ってる感じがして、泣いちゃったんです。 すみません、驚かせて」 「恥ずかしいもんだな、やっぱり。 シュガーにはさ、魔法使いの個性がはっきり出るんだよ」 「ネロは優しいですもんね」 違う。 結局俺は自分の手で、彼女を寝かしつけてやりたかったし、俺のやり方でそうしたかっただけなのだ。 「そんなことないさ。 皆あんたには、良くしてやりたいと思ってるよ」 「あ、もちろん皆さんも優しいですけど!」 「ほら、冷めちまうぞ」 ずくずくと胸の奥で渦巻く気持ちをごまかすようにそう言った。 そうだ、と慌ててハーブティーに口をつける賢者さんを見て、安堵しながらさっきの言葉を反芻する。 (ごめんな、賢者さん) あんたがここからいなくなることがあるなら、それは喜ばしい別れのはずなのに、多分俺、それを悲しいと思っちまう。 あんたが懐かしいのが嬉しいって喜んでくれるそのシュガーだって、喜んでくれて良かったと思うと同時に、どっかで寂しくも思っている。 郷愁に、勝てない。 そんなことを思っている時点で、ただの『俺』が、魔法使いの俺が、求められたいと思ってしまっているのに。 「美味しいです。 こんぺいとう、入れてみてもいいですか」 「ハーブティーに?」 胸中知らぬ笑顔がここへ来たときの暗さを失っていることに喜びつつ、不安にもなっている。 「はい。 絶対もっとゆっくり寝られると思うから」 「はは。 いいよ、好きにしな」 子どもみたいに喜んで、いくつかぽたりと星屑を海に落とすみたいに、シュガーを落としてくるくるスプーンでかき混ぜる。 混ざって、溶けて、海が飲み込んでいく。 (あんたの世界と、一つになれたら、いいのに) 何も失いたくない欲張りで臆病な俺の、子どものたわ言のような願い。 「ありがとう、ネロ」 「はは、何度目だ。 こちらこそ」 今はまだ、この優しい小さな箱の中で、あんたが笑えるならそれでいい。 あんたが元の世界に戻ることを心から祈るふりだってしてやるさ。 (それでいいんだ、多分) 特別が、心を揺らす。 俺の日常と彼女の日常がいつか混じる夢を、色とりどりのシュガーの溶けた海の底にでも、いつか、どうか。

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#まほやく #ミス晶♀ まほやくログ

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もくじ• まほやくは2019年11月配信の新しいアプリ 「魔法使いの約束」(まほやく)は、2019年11月26日から配信が始まったアプリ。 ツキウタの終了という寂しいお知らせがあったころでしたが、変わりに多くの女子の心をつかんでくれそうなアプリが登場しました! 本当は25日配信予定だったのですが、配信が1日の伸びて26日から配信開始。 その後、ちょくちょく緊急メンテが入ったようですが、メンテ連続、バグ続出というわけでもなく、比較的スムーズな滑りだしだったようです。 システムもストーリーもキャラクター設定も、 「こりゃ、絶対外してないでしょ」とやる前から分かるので、安心してダウンロードできちゃいます!!! 公式が公開しているティザーがこちら! ムービーもとても綺麗です。 最近のゲームには珍しく、縦画面。 なんとなく夢100を連想させます。 4となかなかの高評価!• ストーリーが面白い• 絵がキレイ• キャラクターが個性的• これまでにないゲーム性• 人間関係がしっかり書き込まれている• ドロドロしてていい と、全体的によくできている感じっぽいです。 「ストーリーは適当に読み飛ばそうと思ったのに、気付いたらじっくり読み込んでいた」という声もあり、さすが都志見文太!という感じです。 プレイヤー(主人公)の性別を選べる というわけで、私もさっそくダウンロードしてみました! こちらがスタート画面。 絵柄はとてもきれいですがシンプルです。 そして、まほやくの最大の特徴ともいえる、「主人公の性別が選べる」画面! 女性主人公か男性主人公かを選択してプレイできます。 これは楽しい! 私は男性を選択しました。 ゲーム内に登場するキャラクターは21人の「男性」なので、絶対に恋愛要素がある、というわけではないのもこのゲームの魅力かもしれません! プレイヤーは「賢者」、乗っていたエレベーターが異世界へ! 主人公は現代日本に生きるごく普通の若者でしたが、ある日、自宅マンションのエレベーターにスマホを見ながら乗っていたところ、ふと気づくとエレベーターの様子がなんだかおかしいことに。 異世界に飛ばされてしまった主人公はそこで「賢者様」と呼ばれ、「なぜか、異世界から来た賢者様の言うことしか聞かない」という魔法使いとともに、世界を救済することになる、という奇想天外かつ壮大な、……まあ、よくあるストーリーです。 なのですが、「ああ、ありがちなアレね」と思わずついつい導入部を読み進んでしまうのは、キャラクターたちがLive 2Dで動くから! Live 2Dとは、2次元である「絵」そのものが立体的に動く技術。 これまで、多くのゲーム内のキャラは違う表情のイラストに変わったり、違うポーズに変わったり、ということはありましたが、アニメーションのように「動く」のはまれでした。 colyのスタマイ(スタンドマイヒーローズ)が、顔のみLive 2Dを取り入れていたように記憶していますが、それがキャラの全身に採用されていて、「おお、すごい、動いてる!」と新鮮な気持ちで楽しめます。 まほやくは作業ゲー メインページ ちなみに、まほやくは作業ゲーで、リズムゲームでもなければパズルゲームでもありません。 けっこう淡々と作業する「こなす系」。 都志見文太さんがシナリオということで、きっと大勢のアイナナ民がまほやくをダウンロードしたと思うのですが、「なんかだいぶ様子が違うな!?」と思っているのでは……。 難しいリズムゲームやパズルをクリアしなければ先にすすめない、ということがなくストーリーを読めるのは助かりますが、作業しなければレベルが上がらないため、ストーリーを読むためには作業必須です。 作業は2種類で、「魔法使いの育成」と「ミッション」 まずは育成から。 育成させるためのパーティーを作ります。 育成は本当に単純作業ですが、「オート」も可能。 そして「ミッション」では、他のユーザーまたは敵と戦います。 こちらはミニキャラが出てくるのでかわいいです。 ちなみに、全然難しくなくて、自分のチームパワーより低い相手を選べばほぼ確実に勝てるようです。 まほやくに出てくるキャラと声優 さて、気になる21人の魔法使いたちと、CVを務める声優さんはこちら。 中央の国 左から オズ 近藤隆 アーサー 田丸篤志 カイン 神原大地 リケ 永野由祐(ながのゆうすけ) 北の国 左から スノウ 鈴木千尋 ホワイト 寺島拓篤 ミスラ 高橋広樹 オーエン 浅沼晋太郎 ブラッドリー 日野聡 東の国 左から ファウスト 伊東健人 シノ 岡本信彦 ヒースクリフ 河本啓介 ネロ 杉山紀章 西の国 東から シャイロック 立花慎之介 ムル 仲村水希 クロエ 天﨑滉平 ラスティカ 三浦勝之 南の国 フィガロ 森川智之 ルチル 土岐隼一 レノックス 帆世雄一 ミチル 村瀬歩 画像は全てより こうしてみると、ほんと人気&若手が多いのですがちょこちょこ新人さんが混じってたり、かと思うと森川さんや日野さんのような 大御所・ベテランも混じっていて面白いです。 これなら安心してプレイできる! というわけで、ユーザーの評価も高い「まほやく」、あなたもさっそくプレイしてみませんかー?.

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#1 まほやく小話まとめ1

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前々からやってみたいと思ってたことを試してみようと思って。 「ちょっとだけ屈んでもらってもいいですか?」 「何々?」 可笑しそうに笑いながら、屈んでくれる彼に、ちょっと背伸びをして、ふわふわの髪を乱さないように気をつけながら、いいこいいこと撫でた。 「え」 「ふふふ、いつもお疲れ様です。 お医者さんのフィガロがいるからみんな安心して討伐に行けますね」 「俺が撫でることはあっても、撫でられることはそうそうないから、なんだか新鮮だなぁ」 そう言って、フィガロは私の頭をよしよしと撫でててくれる。 「!」 「賢者様も、いつも頑張ってて偉い偉い」 「えへへ、なんだか恥ずかしいです。 小さい子になった気分」 「賢者様が恥ずかしいんだから、俺はもっと恥ずかしいんだけどな」 頬を掻いて照れる姿もかっこいいなぁって思ってしまうあたり、私もこの人にゾッコンだ。 「でも、ちょっとだけ残念」 「何がです?」 「屈んでくれ、なんて言うからさ」 そう言って、私の耳元に口を寄せると、「キスしてくれるのかな?って思っちゃった」と呟いた。 思わず、かぁぁっと頬が赤くなる。 「ふふ、賢者様、可愛いねぇ」 また、よしよしと撫でられる。 これって完全に子供扱いされて揶揄われてる!私だってやれば出来るもん!まさにそんな子供じみた対抗心で、フィガロの腕をグイッと引っ張ると、頬にちゅっとキスをした。 「!」 「わ、私だって…ちゃんと出来ます!」 プイと横向いて、チラリと彼を一瞥すると、頬を染めて「参ったな」と呟いている。 やった!気分はまるで勝ったつもりで、ふふんと上気分になっていると、ぐっと腕を引かれて唇が重なる。 「んんっ!」 「お返し」 「もうっ!フィガロ!」 「ははは、顔が赤いよ賢者様」 「むー」 「ごめんごめん、揶揄ってるわけじゃないよ。 本当に可愛いなと思ってね」 「…フィガロはいつもずるいです…」 いつだって彼は何枚も上手で、私は到底敵いっこない。 背伸びしても、彼には敵わない。 私の大好きな人。 [newpage] 『独占したいほどの』ネロ晶 翌日の朝食の仕込みを終えて、タオルで手を拭うと、キッチンを後にする。 本でも読もうかと思い立ち談話室に向うと、ブラッドがどかっと座って向かいのソファを眺めていた。 「何ニヤニヤしてるんだよ、ブラッド」 俺の言葉が聞こえると、ちらりとこちらを一瞥して、また笑いながら視線を戻す。 一体何を面白がってるんだ?そう思い、俺が近づくと、 「よぉ、こいつ寝ながら百面相してるぜ」 顎で指し示す方向には、賢者さんが座っていた。 膝に本を乗せて、うたた寝している。 さらさらの前髪が少し顔にかかって、表情は読み辛いけれど、どうやら幸せな夢を見ているようでふにゃりと笑った。 「こんなとこで眠っちまって…」 「本を開いたらすぐおねんねしてたぜ」 きっと、疲れていたのだろう。 可愛い寝顔に思わず頬がゆるんだ。 ぴくりと彼女の頭が動き、声が溢れる。 「ん…ねろぉ」 甘えたような寝言に、自分の名前を呼ぶその声音に、思わずドキリとする。 彼女がこういう声を聞かせてくれるのはベッドの中でだけなので、素面で聞くと思わず頬が赤くなる。 「おーおー、お熱いことで」 「うるせぇ」 揶揄うブラッドを軽く睨んでやったが、今の俺の表情では逆効果かもしれない。 「へいへい、邪魔者は消えてやるよ」 ニヤりとしながら手をヒラヒラ振って、ブラッドが出て行くのを確認して、賢者さんの頭を撫でる。 一生懸命こっちの文字を勉強して、たくさん本を読んで色んなことを吸収しようとしている、純真で努力家の普通の人間の女の子。 慣れない異世界での料理もとても頑張っていると思う。 贔屓目抜きにして。 「あんまり無理するなよ」 前髪を耳にかけて額に優しくキスを落とすと、「んぅ」と呟いて身動ぎするが、また、すぅすぅと愛らしい寝息が聞こえて来る。 ここでずっと寝かしておくわけにも行かないし、起こすのも可哀想で、そっと彼女を抱きかかえると、俺は自分の部屋に向かった。 賢者さんの部屋ではなく、彼女を自分の部屋に連れてきてしまうあたり、俺も相当だなと、苦笑する。 相変わらず規則的な寝息をたてている彼女をベッドにそっと下ろすと、自分もその脇に腰掛ける。 嗚呼、なんて可愛いんだろう。 柄にもなく純粋にそんな風に思ってしまう。 それだけ、俺には彼女が眩しいのだ。 寝入るには窮屈そうなブラウスの1番上のボタンを外すと、彼女の白い肌が晒される。 他意はなかったのだが、隙間から覗く鎖骨に色付く赤に、思わず息を飲んだ。 それは昨晩彼女に刻んだ、自分のモノだという証。 「俺以外の前で、あんまり無防備な姿を見せないでくれよ」 この歳になって、こんな青臭い感情を持つだなんて思ってもみなかった。 「ねろぉ…ん、すき」 ふにゃりと笑った寝顔に完全にノックアウトされた俺は、思わず彼女の唇を塞いだ。 柔らかなそれをたっぷり堪能して、解放する頃には、瞳に涙の膜を張った愛らしい彼女が頬を紅潮させて、困ったような顔で俺を見上げていた。 「ね、ろ?」 「愛してるよ、賢者さん」 状況が理解出来ない彼女をベッドに縫い付けて、ブラウスのボタンを丁寧に外していく。 嗚呼、本当に俺は彼女に心底惚れている…。 自分の感情を追い払うように、彼女の唇をもう一度塞いだ。 [newpage] 『優しい指先』ブラ晶 「い、いひゃいれす、にゃにするんれすか、ぶらっどりー」 ケラケラと笑いながら、むにーと頬を引っ張られて、私は抗議の声を上げたけれど、それはほぼ言葉になっておらず…。 むにむにと弾力を確かめるように遊ばれているほっぺたがちょっとだけひりひりする。 「お前、ほんと能天気な顔してんなぁ」 「むぅ」 ぱっと離された手をじとっと眺める。 男らしい手だなぁとまじまじと眺めていると、 「んだよ、俺の手がどうかしたか?」 「いや、ブラッドリーの手は大きいなぁと思って」 「あ?普通だろ?」 「いや、やっぱ大きいですって」 差し出された手に自分の手を重ねてみても、かなり大きさに違いがある。 レノックスもそうだけど、ブラッドリーも男らしい手をしているんだなぁ。 「色んなモンをぶっ潰して来た手だ。 怖いか?」 「ん、怖くなんてないですよ。 こんなに温かくて、優しい手なんです。 今までブラッドリーがどんなことをしてきたのか、私は詳しく知らないですけど。 今のブラッドリーは、優しくて頼りになる、私にとって大切な賢者の魔法使いです」 そう言って、ブラッドリーの指先に、自分の指先を絡めてぎゅっと握った。 「お前さぁ、自覚ねーの?」 「ふぇ?」 「なんでもねーよ」 ブラッドリーは片手でぎゅっと私の手を握ったまま、もう片方の手でまたほっぺたをむにーと引っ張った。 「らから、なんれひっぱるんれすか」 「お前が悪い」 「なんれ…ひろい」 思い当たる節は全くなくて、思わず涙目になる。 でも、私は知ってる。 彼が加減して私の頬に触れてくれていることを。 優しい指先が自分に触れるのが嬉しくて、思わずふにゃりと笑ってしまう。 「おい、なんでそこで笑うんだよ。 気持ち悪りぃぞ」 「ひろい」 「ははっ、揶揄いがいのあるヤツ」 やっと解放されたほんの少しひりひりする頬を片手で押さえながら、私は嬉しくなって笑ってしまう。 彼にとって、揶揄う対象というのは、きっと嫌われてはいないのだろうと思って。 「んー、やっぱり好きです。 すごく好き」 「…は?」 「ブラッドリーの手です。 男らしくて、優しくて、ちょっと意地悪で、でもあったかいから」 へらりと笑うと、ブラッドリーは何故かムスッとして、 「手だけかよ」 とボソッと呟いた。 「そんなわけ無いですよ、私が風邪っぽい時はブランケットを出してくれるし、オズとミスラが戦ってて危ない時は私を助けてくれるし、優しいブラッドリーのこと私は、大好きですよ」 「あー」 ブラッドリーはそれを聞くと満足そうにフフンと笑って。 「そりゃそうだろう。 このブラッドリー様だからな」 うんうん、と頷いて納得している。 この自信満々さも、彼の美徳の一つだよなぁと思いながら。 「ブラッドリーは、私のことどう思いますか?」 「そうだなぁ、ちんちくりんなガキ」 「えっ」 思わずガーンと効果音が流れそうになる。 「…だけどまぁ、一丁前に色々頑張ろうとしてて、可愛げがあるんじゃねぇの?」 「なんか他人事なんですけど!!」 「ハッ」 「んもー!!」 「ったく、聞かなくてもわかんだろう。 この俺様が恋人繋ぎしてやってんだぞ」 「?なんですか?」 「なんでもねーよ」 「えー、教えて下さいよ」 「お前がイイ女になったら考えてやるよ」 「もう!またそうやって子供扱いして!」 ぷんぷんと怒りながら、ポカポカブラッドリーの胸元を叩くけれど、全く響いている気配がない。 いつか絶対見返してやる!と思っても、今はこの軽口が言える距離感が絶妙な気がして。 でも、もっと彼に近付きたいという気持ちも捨てきれなくて。 「こんなに好きなのになぁ」 「あ?」 「何でもないですー!」 「んだと!」 先ほどまで、繋いでいた手をぎゅうっと抱きしめて、私はプイとそっぽを向いた。 赤くなった頬を見られないように。

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